日本経済再興の経済学―新正統派ケインズ主義宣言

とりあえず書評第一弾。

日本経済再興の経済学―新正統派ケインズ主義宣言

日本経済再興の経済学―新正統派ケインズ主義宣言

主旨は次の通り。

政府が通貨を得る手段は次の三つがある。
1. 税収
2. 国債
3. 通貨発行

このうちで3.通貨発行を行うとインフレを招き経済を破壊する虞があると一般に言われているがそれは間違いである。なぜならば現在の日本にはGDPの30%〜40%もの膨大なデフレギャップ(供給能力と需要との差)が存在しているため、その範囲内であれば通貨発行を行ってもインフレは起きないどころか、需要を大幅に喚起することにより経済が急速に好転する。
発行された通貨の配分方法としては国民に一律40万円の臨時ボーナスを支給することを提案する。
要するにデフレギャップの源泉は供給能力という「国富」であるのだからこれを利用しない手は無いのである。

といったことが主旨である。

また乗数効果についての数値的な考察もあり、現在の日本では2.4〜2.5程度と考えるのが数値的にも根拠の有る判断である。


さてさて、この主張に従うと、ケインズ経済学の手法に則って50兆円前後の通貨を発行(勿論これはデフレギャップの範囲内)すれば瞬く間に好景気が訪れることになる。
この論説が妥当であればこれほど有効な経済浮揚手段は無いわけである。
で、その妥当性の検証に当たっては、次のところを精査する必要がある。
1. 筆者が個人的に計測したとするデフレギャップ量の妥当性
2. デフレギャップの範囲内での通貨発行が経済に与える好影響が本当に著者の述べる通りであるかの過去の実例調査

このあたりを勘定した結果、良策と判断できれば熱烈に支持したい内容であると思う。