ドバイのまちづくり

ドバイのまちづくり―地域開発の知恵と発想

ドバイのまちづくり―地域開発の知恵と発想

ドバイと言えば、オイルマネーで巨大な人工島だとか超高層ビルだとかを作っているイメージだったのだが、本書を読むとその源流にある哲学が解ってくる。
アラブ首長国連邦(UAE)というのは嘗ての砂漠の民の内の有力な部族が作った国の集まりである。要するに部族の長である首長の国の集まりだ。
そのUEAの中ではドバイが飛びぬけてオイルマネーに恵まれているわけではなく、実はドバイよりもお隣のアブダビの方が石油資源が潤沢である。
だが一般的なイメージとしてドバイはオイルマネーで強力に国土開発を推進している印象を受ける。実はこれはドバイの長である部族の教えにより、いつかは枯渇する石油資源を使い切るのではなく将来に向けての投資に変えようという意図があるのである。
ドバイの国土開発は話題性の高い超高級ホテルだとかが印象が強いのだが、実際には、大規模な港湾や空港を整備して物流の拠点を構築したり、資本を呼び込むために規制が緩和されたフリーゾーンと呼ばれる特別区を作ったり、或いは「観光資源として」超高級ホテルやらを造ったりしているのである。このようにして、オイルマネーが無くなっても国家が繁栄出来るための礎を築いているわけだ。
というわけで本書を読むとドバイのイメージはかなり変わる。ドバイはオイルマネーを浪費するキリギリスではなく、有限な石油資源を将来世代へ残す資源に変えるためにせっせと働くアリだというのが実情のようだ。